トンデモ本の世界 / と学会

トンデモない本をネタにして笑う書評集。元の素材のキチガイっぷりが半端じゃなく、ツッコミもいい感じに冴えてるので笑えます。書評の新しいスタイルがここにあると断言します。本書によるとトンデモ本の定義とは「著者が意図したものとは異なる視点から読んで楽しめるもの」だそうです。具体的にはどんな本かというと、


ナチスがUFOを造っていた」
「植物は警告する」
「日銀券は悪魔の隠し絵」
「超ノストラダムス平成大予言」
「古代、アメリカは日本だった!」
「超能力馬券術」


という少しでも分別ある人が見たら絶望しそうなラインナップなのです。ちなみに最後に掲載した本によると「武豊は反重力で勝っている」らしいです。すごいですね最近のジョッキーは。
さて、こういったトンデモ本は一般的にはゴミ本です。その内容に少しでも賛同してしまったら世間から白い眼で見られてしまうクズ本です。誰からも相手にされずひっそりと消えていく、残念な本なのです。
実際に私は読んだことないんですが、引用文を読む限りではあんまり評価できる内容ではありませんでした。「センス・オブ・ワンダーの定義」で作ったグラフなら、全ての基準で1点や2点をマークしそうなレベルです。
しかしここに「トンデモ度」というベクトルを導入するとあら不思議。なんと全体としてクズ本であればあるほどトンデモ度は鋭く伸びていくのです。要するにこれはクズ本のクズ性を一種のボケとみなして評価しようという試みです。だから一般的な評価が低ければ低いほど、それはボケとして完成し、トンデモ本として高評価されます。
これは価値観のちゃぶ台返しであり批評の革命です。見よ! そこにこそ価値の創造がある! と100年後の哲学書に記されているはずです(またこのオチか)。




余談。とはいえこの批評スタイルは「喧嘩売ってんのか」と怒られることも多く、実際に著者であると学会のメンバーはネットで嫌われています。中には「内輪のトンデモ本はネタにしないじゃないか! 内輪を守るのは、と学会の精神に反する卑怯な態度だ!」といった筋違いな批判さえあるほどです。
はっきり言ってこれは芸人に「自分の娘がブサイクであることをネタにしないのはおかしい!」と怒るのと同じで、その人の人間性を否定した大人気ないクレームです。こんな文句を言う人がいたら残念で仕方がないと思うんですが、どうでしょう。というか、と学会の批評にそこまで怒る人って、ネタにされた本人かそのフォロワーしか考えられないんですが……。まあ、もし仮にそうだとしても生暖かい目で見守ってあげましょう。どんな意見も言論の自由のもと許されているんですから(なにこの上から目線)。