男子の本懐 / 城山三郎

大震災、世界不況、デフレ、とまるで現在の日本かって感じの20〜30年代。人々の不満は高まるは、関東軍は無暗にがんばるわ、政治家は撃たれるはで、大変だったのですが、この小説はそんなやんちゃな時代に己の理想を貫こうとした2人の政治家の物語です。首相の浜口雄幸、大蔵大臣の井上準之助。この2人は不安定な為替相場を嫌い、金本位制への復帰を政策目標に掲げていました。しかも、国際競争力のない国内産業をしばき上げて強くするために、旧平価(円高水準)での金本位制への復帰を考えておりました。
結果として、この政策はデフレをさらに進行させて景気を低迷させる失策だったのですが、ともあれ理想のために倒れるならむしろ本望と突き進む姿にはロマンを感じます。あとは日銀時代の井上の仕事ぶりとか、浜口の大蔵省時代の左遷されっぷりとかが読みどころ。偉い人の伝記は面白い。