ディスコ探偵水曜日〈上〉 / 舞城王太郎

なんだこれは。過剰だ。過剰すぎる。導入部の30ページは傑作SFを予感させる出だしなのに、そこから清涼院流水「コズミック」のような、バカミスが延々と続く。殺人事件に過剰な意味づけを与える名探偵が出るのはまだいいとして、なんでこんなにいっぱい出す必要があるのだ。どんでん返しにつぐどんでん返しもこれだけ繰り返されると、もういい加減にしてくれと思う。しかし清涼院流水が真正のバカミステリであるのに対し、舞城王太郎には「これがバカであることを自覚したうえで、それでもあえてバカ」というメタ的な視点がある。単なるバカミスではないような気がするのだ。
そしてこの文体。饒舌であり、猥雑であり、なんかもうはちゃめちゃである。同じはちゃめちゃでありながらも、どこか安定した統一感を持つ町田康とは違い、読むのが疲れる。しかし、ところどころやたらと日常性を帯びた人間臭いリアクションが挟まれていたりするので、わけわからん小説特有の浮遊感はあまりない。このあたりの臨場感は「九十九十九」でも発揮されており、才能だと思う。

今のところやっと上巻を読み切ったところなので、まだこれからどうなるかわからないけど、評価するとしたら、こんな感じになる。
町田康「パンク侍」「好き好き大好き超愛してる。」「九十九十九」>「ディスコ探偵水曜日」>清涼院流水「コズミック」・「ジョーカー」「煙か土か食い物」>>>「暗闇の中で子供」


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