燃料電池が世界を変える / 広瀬隆

原子力の代替電源として何が適当かを考える上で参考になる一冊。反原発で知られるジャーナリストが書いた本なので、その点は割り引いて読まないといけませんが、著者独自の主張はあまりなく、方々の専門家の意見をまとめただけなので信憑性はそこそこありそうです。内容は燃料電池のことだけじゃなくて、メタンハイドレートなどの新エネ一般を扱ってます。また既存の火力発電所の効率を上げるコンバインドサイクルを使えば、原発分のエネルギーをまかなえるという話が面白かったです。

コンバインドサイクルを採用して電力を生み出すには、従来型の古い蒸気タービン火力を閉鎖する必要はない。今まで使ってきた蒸気タービンと発電機は、どこも悪くない。その頭にガスタービンを取り付けて、コンバインドサイクルに改造すれば、最新鋭の発電所に生まれ変わる。だからこそ、コンバインドと呼ばれる。このような改造によるパワー上昇は、ヨーロッパ各地での実績がある。


(中略)日本ガス協会によれば、こうした出力向上によって、日本国内の自家発電だけで1750万キロの電力がうまれる。これを電力会社がフルに応用すれば、電力会社が所有する火力発電所のうち3割をコンバインドサイクルに改善するだけで、2000万キロワット以上が生まれる。これの数字は、原発を全てストップしても電力不足という問題が起こらないことを証明している。*1


しかもこれ、大気汚染も減らせるんです。

ガス・コンバインドサイクルは、効率を高めるだけでなく、ガスがクリーンであるためと、効率上昇によって、排気ガス中の窒素酸化物と硫黄酸化物、排熱、二酸化炭素が著しく減少する。*2


ただこの本自体は10年前の本なので注意が必要です。現在は新エネの事情もだいぶ変わっていることでしょう。ていうか、燃料電池がまったく世界を変えていないところが泣ける。

*1:271p

*2:274p