大いなる助走 / 筒井康隆

同人誌で腕を鍛えて作家になる、というルートはいまでこそあんまり聞かないですが、筒井康隆はまさにそうしてデビューした作家でした。本作は、文学を志す者同士お互いに切磋琢磨しあうという美しい外観に反して、同人の内部はドロドロしてるよ、と暴露する作品であります。上手い人間に対する嫉妬、政治に走るバカ、井の中の蛙の醜さなど、陰湿でいやらしい人間のバーゲンセールであり、ゼミやサークルをやっている人なら身に覚えが有りすぎて吐き気がするほどです。僕も勉強会やゼミは好きなほうですが、それが大いなる助走で終わり、なんの成果にも結実しないなんてことはマジ勘弁であります。助走は飛ぶためにあるのですから。