原始人 / 筒井康隆

「こら。読みさらせこの脳なしの能なしの悩なしめ。手前だ。ふらふらと視線さまよわせ気軽、心安らか、自らは何ひとつ傷つかず読める小説がないかときょとつく手前のことだ。できるだけ自分の理解できる範囲内のことしか書かれていず肥大したおのれが自我にずぶずぶずぶずぶ食い込んでくることのないような小説のそのまた上澄みのみを掠め取ろうとしている盗っ人泥棒野郎そうとも貴様のことだこの両性具有め。」






というけんか腰の冒頭から始まる「読者罵倒」という短編が秀逸。結局最初から最後までこんな調子でタイトルどおりのことを有言実行しているなんともファンキーな小説です。
他にはジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」のような、人並みの知性がない語り手の話「原始人」や、天才たち十二人の紹介文が続くだけという「抑止力としての十二使徒」がよかったですね。わけのわからない内容なんだけど、言葉と言葉のつながりが自然でついつい引き込まれてしまいます。筒井康隆の文体はホント天才ですなー。