笑犬樓よりの眺望 / 筒井康隆

筒井康隆のエッセイは下手したら作品そのものよりも面白いから困る。「断筆宣言への軌跡」と一部かぶっているんですが、こっちのほうが色んなネタを扱っており読み応えがあります。もう書きたい放題やってるんで痛快を通り越して唖然とします。平然と死ねだの糞だのと書いてるし。筒井さんはくだらない建前や良識をかなぐり捨ててこういうぶっちゃけたトークをしてくれるから好きです。とくに面白かったのは批判的な書評にたいして苦言を呈した以下の記事。

読者に読む気を失わせ、作家に書く気をなくさせるものが書評であろうか。そんなものを書くものが文芸評論家といえるのか。作家の側からこういう発言があると、批評家の側からはきまって「そんな自信のないことでよく作家がつとまるものだ。ちょっとぐらいの批判で書く気をなくすのなら、小説など書くな」という反撥がある。しかし、ちょっとくらいの批判ですぐに女々しく泣きごとを言い、自信を喪失し、おろおろし、ぎゃあぎゃあとわめきたてるのが作家なのである。どんな批判にも動じないという図太い人間の書いた小説がどんなものか、われわれは開き直った老大家の作品を読んで知っている。

なるほどねー。ただ時事問題はところどころ分かんないところがあって置いてけぼりでした。まあ昔の事件を知るにはいい機会だったかもしれません。