オウエンのために祈りを / ジョン・アーヴィング

親友オウエンのために祈りを捧げるようになった主人公の半生を描いたストーリー。スリルやサスペンスに飽きてきたので、現代アメリカ文学の旗手として名高いアーヴィングでも読んでおこうかと思って手に取ったんですが、これだからブンガクってヤツは! と愚痴りたくなる出来でした。まったりとした「フォレスト・ガンプ」、冒険しない「スタンド・バイ・ミー」って感じで、話好きのおばさんの弛緩した世間話のようなだるさがあります。安っぽいスリルでいいから、もっとこうなんかないのか、と非常にもどかしかったです。




刑務所では甘いものが一切食べられないので、甘党じゃなくても頭の中がスイーツのことでいっぱいになるそうですが、似たような禁断症状が出ました。ほんのちょっとでいい。スリルを……! サスペンスを……! 頼むからもう少しエンタメバカにも配慮してくれ。一応ラストは少しだけ盛り上がるんですが、さんざんひっぱっといてこんな安易な結末でいいんでしょうか。たしかに祈りたくはなる。なるけど、そりゃこの特殊なケースだから可能だってだけで、なんら普遍的ではありません。正直がっかりですよ。
祈りについてまともに書いた本が読みたいなら、舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」がオススメです。