初恋 / 吉村達也

平凡なサラリーマンの主人公に、中学校の同級生だった女性(ヤンデレ)がストーカーとして襲い掛かるというストーリーです。まあ、それなりに面白かったです。設定も文体も陳腐なんですが、テンポよく読ませる力は抜群ですね。ただちょっと不満なのは狂気に蝕まれる側の描写がほとんどなく、人間の狂気があんまり伝わってこなかったところです。変質者に殺された被害者のニュースを見たときと同程度の共感・恐怖しか感じることができませんでした。ああ、世の中には恐い人もいるなあ、と。せっかくの小説なんですから、もっとその恐さをつきつめてもいいんじゃないかと思います。まあ、運悪く変人につきまとわれて災難……というパニック小説だから仕方ないのかもしれませんが。
この作家についてはいろいろ言いたいことがあるので続きをどうぞ。


吉村達也のホラーにみる共通項

吉村達也のホラーって結局言いたいことはひとつです。「なんだかんだいって人間が一番怖いよね」と。まあ、現実的な恐怖というのならキチガイに刃物のコンボが最強なんでしょうが、そればっかりしか書かないのもどうかと思います。貴志祐介みたいにとは言いませんが、せめてもうちょっと色んなものを書いてくれないと、飽きてしまいますよ。一応「初恋」〜「お見合い」までは追っかけましたが、さすがにこれ以上はついていけません。凡作の量産具合をみると赤川次郎とかと同じレベルの作家です。まあ、赤川次郎よりもマシですが。一時はハマるかもしれませんがいずれは卒業せざるを得ない人です。