エディプスの恋人 / 筒井康隆

七瀬三部作の完結編。シリーズものはたいてい前作で登場したキャラが再登場するのを楽しみにするものですが、この作品ほど前作のキャラをないがしろにしているのもめずらしい。全能の神みたいな存在がいて、その神に特別に愛されているやつがいて、主人公はそいつらのために動くちょい役に成り下がっているのです。しかも神の全能っぷりは半端なく、ちょい役であることにすら不満を感じられないよう統制されているので、読んでる方としてはいかんともしがたい無力感におそわれます。作られた現実への違和感からストレートに「神への反抗」へといたれば「マトリックス」的な爽快感もあるのですが、それもない。教訓の引き出せないオーウェル「1984年」といったところでしょうか。