塗仏の宴 / 京極夏彦

京極堂シリーズ第6作目。大量虐殺があったとかなかったとか、そんな話。凶器にもなりうる犯罪的な厚さの文庫本が上下二冊あるという、冒涜的な重量に圧倒されます。面白いんですが、長すぎです。内容は……そうですね、あまりいつもと変わりません。しいていえば、普段は事件解決のときまで傍観者であった京極堂を巻き込んじゃうあたりが違ってます。読者的にはたいした違いじゃないんですが。
あと新キャラの多々良先生がよかったですね。多々良先生初登場っていうだけでも価値ありますよ。このキャラの魅力が最大限に発揮されている「今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉」は腹筋を鍛えられるほど笑わせてもらいました。ミステリのトリック部分はシリーズ中一番無茶なものでしたが、ミステリとして読んでいないんで楽しめました。叙述トリック多すぎ。
今回のテーマは「家族」です。ありふれたテーマであり安易な家族愛など、お涙頂戴系に陥りやすい題材ですが、さすがにそう単純な感動はありません。もともと複雑なものを単純化せず複雑なまま書こうとしているので、どこか歯切れの悪い感じはしますが、けっこうよかったと思います。