さよならダイノサウルス / ロバート・J・ソウヤー

SF初心者に海外作品をオススメするなら、まずはロバート・J・ソウヤーを推したい。翻訳作品しては驚異の読みやすさを誇る作家です。エンタテイメントとして一流であり、なおかつSFとしても面白い。まあ、物語としての面白さを重視するあまり、「もしかしたら本当にあるかも?」と思わせるようなセンス・オブ・ワンダーに欠けますが、それを補ってなお余りあるわくわく感があります。日本の作家でいえば貴志祐介みたいなポジションです。


本書はタイムトラベルもので、「恐竜はなぜ絶滅したのか」という謎に迫るミステリでもあります。考古学者でなくとも、恐竜の絶滅というテーマには夢とロマンを感じると思うんですが、どうですかね。隕石の衝突で絶滅したというのが定説ですが、それだけでは説明しきれない数々の疑問点があります。そういった科学的な考察も、ストーリーを分断することなく上手く配置されており、好印象。でもソウヤーの作品の中にはもっと面白いものもあるので、なんとなくベタ褒めしたくもないんですね。惚れ込んでいるサッカー選手が試合で精彩を欠いているときの、あるいは一番人気の馬に乗った武豊掲示板ギリギリだったときの、まあそれなりに仕事はしているんだがでもお前ならもっとできるだろ! みたいな複雑な心境です。