日本中枢の崩壊 / 古賀茂明

著者は日本の根本的な問題を官僚のインセンティブ設計だとしている。官僚は一度省庁に入った後はその省庁に骨を埋めることになる。出向によって他の省庁で働くことはあっても、その働きぶりを評価するのはやはり最初に入った省庁なのだ。ということは、どうしても官僚は省益のために行動せざるをえない。天下りによって老後の世話をしてくれることも考えると、省益に貢献せざるをえないインセンティブが、官僚の人生を支配しているともいえる。
では、どうすればよいのか。官僚のインセンティブを省益から国益へと向けるためには、官僚の人事権を省庁から内閣に移すしかない。つまり内閣人事局構想である。今までの評価基準はいかに所属の省の権益を増やすかだけであったが、内閣人事局が評価をする以上、省の権限を縮小させより効率のよい制度設計をデザインすることも推奨されるようになる。省庁最適であったいままでの制度が全体最適へと変わるのだ。これこそが公務員制度改革の骨子であった。しかし、省庁の権限を大幅に奪うためにあの手この手で骨抜きにされて今に至るというわけである。
本書は現役の経産省官僚が、公務員制度改革や東電の処理について政策提言した本である。その内容はもっともであり、とくに批判はない。なお、僕が面白かったのは官僚の人生設計について語るところであり、このあたりなかなか生々しい恨みつらみが書かれてあって参考になる。省庁をめざしている学生諸君は読んでおいて損はない。