津波による原発事故は予想できていた――藤田祐幸「脱原発のエネルギー計画」

終末感漂うこの週末、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
僕は被害のほとんどない東京にいるのですが、普段は冷静キャラの友人が妙にあわてていたりして、なんとなく「ああ、やべーな」という気持ちになっています。
さて、本題ですが、池田信夫氏が「津波による原発事故は想定外だった」ということを主張しています。

電源が落ちてECCS(緊急炉心冷却装置)が止まったことも想定の範囲内ですが、このとき炉内を冷却するポンプが想定をはるかに超える津波で壊れ、予備の電源も壊れてバックアップの冷却装置も動かなくなりました。これは反対派も想定していなかった事態で、従来の論争の枠組の外側のブラック・スワンです。
原発事故というブラック・スワン – アゴラ

これは単純に事実誤認じゃないでしょうか。
理学博士・藤田祐幸氏が1996年の段階ですでに「津波により発電所が冠水し、停電がおこり、それから炉心溶融が起こる」可能性を指摘しています。

地震による津波原発を襲ったらどうなるだろう。日本の原発は、海水を冷却水に使っているので、どれも海沿いに建てられている。津波が押し寄せる前には、海水が沖合まで引いてしまうことはよく知られている。この引潮で冷却水の取水口が空中に露呈してしまうと、冷却水ポンプが空回りをして原子炉の冷却ができなくなり、炉心溶融事故に発展する可能性が高い。(中略)
さらに、津波が押し寄せた場合、かりに頑強につくられている主な建造物が助かったとしても、非常用の補助発電機が冠水してしまえば、原子力発電所の全体が停電して、冷却水ポンプを回すこともできなくなり、炉心溶融につながることを覚悟しなければならない。*1

ただ原発反対派の多くが「地震により直接、冷却用の細管が破断し、炉心溶融 → 水素爆発・水蒸気爆発」のパターンを想定していたことは事実でしょう。昔ディベート原発廃止論題をやった時に100冊くらい読んだ原発関連本の大半がそうでした。

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