旅のラゴス / 筒井康隆

ドラクエ3の職業「遊び人」はまったく使えない。戦闘中ですら遊んでやがる。しかしそんな遊び人も苦労してレベル20まで育てれば最強の職業・賢者へと転職することが可能なのだ。遊びも極めれば悟りにいたるという、わけのわからない仕様であった。しかし、本書を読んでみれば、ドラクエの開発スタッフがあのような仕様にしたのもむべなるかな。猥雑で低俗な小説ばかりを大量生産してきた作家・筒井康隆が、ふと書き上げてみたこのファンタジー。なんというか、まるで人生を追体験していくかのような濃さがある。文章自体は淡白であり、長さもそんなない。しかし、エピソードの一つ一つが、ああ、そういえば昔あんなことあったなあと思い返すような、そうした郷愁を帯びていて、読後感はまるで人生が一つ終わったかのような余韻がある。「東海道戦争」とか書いていた人とは思えない。