心をつくる / クリス・フリス

心は脳がつくっている錯覚だという。実験によると、指の動きを心が自覚する0.5秒前にすでに脳は指を動かす決定をしている、ということがわかった。つまり、自由意思をもって指を動かしたというよりも、すでに脳が行動を決定して、そのあとから心が「ああ、そうそう、おれって指を動かしたかったんだよね」と追認しているのだ。




たとえば、人は指を動かそうとするとき、いちいち心の中で「指、動け!」と念じているわけではない。逆に「指、動け!」と心の中でつぶやいても、そう念じることと実際に動くことは別の話だから、指は動かない。しかしいざ指を動かそうとすると、いとも簡単に動くし、しかもその動きは心のどこかからではなく指そのものから生まれるような感じがする。この直感は、実は正しいかったわけだ。
他にも脳が物理世界をどのように認識しているのか、そしてその認識をもとにつくられる「世界」がいかに脳が創作したものであるか、とか面白いトピックがけっこうある。一昔前までは哲学ががんばってきた認識の話は、いまや完全に脳科学の土俵になってしまったようだ。カントを読んで物自体は不可知だからうんぬん、みたいなことをやるんだったら脳科学をやったほうがいいね。