脳のなかの倫理 / マイケル・ガザニガ

どこからどこまでが倫理的に悪いのかという問いには伝統的に哲学畑の頭でっかちが答えてきたんだけど、ようやく文学的な韜晦の肥溜めのようなその倫理学に、科学の光が差し込んできた。という話ではない。逆に脳科学の進歩に既存の倫理学がまったく追いついてなくて、既存のフレームでは解けないような難問がごろごろしててけっこうヤバくね? という話なのだ。たとえば脳の個人的特徴を指紋のように使い犯罪を捜査する技術が出来てしまうらしい。
また倫理の成り立ちにも仮説を立てている。脳内のミラーニューロンは他者の感覚を「自分の感覚」として認識してしまう。つまり他人が痛がっているとき実際に自分も痛いのだ。この共感器官があるため、僕たちは「他人が痛がることはしない」という利他主義を利己的に体現することができるなどなど。すごく面白いポピュラーサイエンスですよ。