若者はなぜ3年で辞めるのか? / 城繁幸

若者を年功序列の被害者に見立てて、日本の労働システムを批判する本です。長期雇用・年功序列・正社員のコンボで高度経済成長期はうまく回っていたけど、もう低成長なんでガタがきてるよ。はやく雇用を流動化させないと! という論旨。概括的な現状の分析というより、雑誌によくあるような現場の人間に聞いてみたらこんなひどいことになっていた! という内容なのでちょっと薄いかな。さくっと読める点はいいですね。「経済成長なんてしなくても別にいいんじゃね? 新自由主義とか終わったし」という意見をよく耳にしますが、では実際に今の硬直した労働システムのまま低成長が続くと次のようになります。

年収で言えば、30代後半から40代前半で、昇給は完全にストップすることになる。従来、日本企業では50代前半が基本給のピークだったが、毎年昇給し続ける定期昇給あっての話だ。それより15年近く前でストップすると考えると、おそらく団塊世代あたりの年収の6,7割程度の水準までしか年収アップは望めそうにない。
組織内での序列があがらない以上、仕事の内容も20代の頃と大きくは変わらない。権限を握り、ビジネスの上流のアウトラインを構築できるのは、勝ち組として部長以上のポストにつけた人間だけだ。そうでないもののほとんどは、単純な作業中心で人生の大半を費やすことになる。
これが技術系のエンジニアであれば、事態はさらに深刻だ。彼が入社以来取り組んできた専門の技術が、その後も長く業界標準であり続けるなら、彼が順調にポストにつける可能性はその他の事務部門などと同程度にはある。
だが、もし技術革新により、そのノウハウやスキルの蓄積がまったく役立たなくなってしまった場合、彼が若い頃の労働の報酬として受け取るのは、おそらくポストではなく、配置転換や早期退職などのリストラだ。

うわ、重い……。経済的自由主義を批判するのは、なんか自分が俗世間を離れた高尚な立場にたてる気がするので心地がいいんですが、経済成長してくれないと困るのは「勝ち組」ほど生産性の高くないふつーの人たちです。こういう人たちが規制緩和・競争促進といった自由主義を悪者扱いするのは、自分で自分の首を絞めてるだけなのでやりきれませんね。