エネルギー政策 ≠ 電力政策
また著者はエネルギー政策と電力政策は異なるとも主張しています。日本で消費されるエネルギーのうち、電力として消費されるのは25%ほどにすぎないからです。つまり、発電の燃料として優れていなくても、エネルギーとしては優れていることもあるし、その逆もあるわけです。たとえば石油は、発電方法としては天然ガスよりも環境負荷が高いという欠点がありますが、その他のエネルギー源として代替不可能な圧倒的メリットを持っています。
石油のメリットとしてはまず、三点挙げられる。
第一に、重量・体積当たりのエネルギー量の多さである。石油は、同じ体積・重量で石炭のほぼ二倍の熱量があり、同じ体積で水素の3000倍、天然ガスの1000倍の熱量がある(一気圧下)。
第二に、使い勝手が極めてよい。常温常圧下で液体であり、揮発性も高くないので、どんな容器でも貯蔵、輸送が可能であり、消費現場でも出力調整が非常に容易である。おそらく全ての機器の中で最も高い容積・重量当たりエネルギー効率を要求される航空機を考えてみれば分かりやすいが、電気旅客機や石炭輸送機、原子力戦闘機、太陽光ヘリコプターなどというのはおよそ考えにくく、事実上、石油でしか航空機は飛ばせない(バイオ燃料はひとまずおく)。だから重量・容積当たりの効率性を要求される交通・輸送用には、石油が一番理想的なエネルギーであり、欠かせない。
第三は、石炭に比べて環境負荷が低い点である。石炭に比べると、産出現場でも消費現場でも汚染物質排出ははるかに少なく、またCO2排出量も二〜三割程度少ない。
つまり、どのような発電方法が主流になるかに関わらず、石油依存を止めることはできないのです。というわけで脱石油社会などとほざいている書籍はいますぐ捨てましょう。むしろ、石油がエネルギー資源として重要だからこそ、発電方法として石油火力発電の依存を減らさないといけないわけです。