「食糧危機」をあおってはいけない / 川島博之

読んでいて楽しい。真に啓蒙的な本というのは、ただ単に役立つだけでなく、世界が広がっていく爽快感をともなうのです。本書では食糧不足というのが単なる俗説で、実際は潜在的な生産能力がかなりあるということをデータで示しています。とくに面白かったのはアフリカで化学肥料が使われない理由。実は化学肥料によって農業の生産性を上げること自体は簡単らしいです。しかし農作物を輸出する物流・インフラが無いため、大量に収穫できてしまうと供給が需要を上回ってしまい、農作物の価格が下落してしまうのです。だから、飢えで苦しむリスクを背負ってでも生産性の低い農業を続ける方が、農家にとっては得なわけです。なんて世界だ。