鏡の中は日曜日 / 殊能将之

梵貝荘と呼ばれる法螺貝様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる……というストーリー。芸術に関するネタがあり、叙述トリックもあるので筒井康隆「ロートレック荘事件」を思い出しました。
本格ミステリというのがどういうものかイマイチわからないんですが、その条件を「名探偵が複雑なトリックを暴き事件を解決する」というありきたりな形式から生まれる美しさだとしています。だとすると、この作品はまさしく本格ミステリです。でもかなりひねくれた本格ミステリです。ミステリならではの技巧がこれでもかっていうぐらい凝らされています。そういう意味では清涼院流水「ジョーカー」っぽいです。こういうのは技に溺れた感じがしてあまり好きじゃないんですが、メタフィクション的な面白さがある作中作があったので個人的には満足でした。
エンタメとしてはかなり上の部類。伏線が次々と回収されるさまはやっぱり快感です。オススメしてくれたピルクスさん、ありがとうございます!