ハサミ男 / 殊能将之

少女を殺してハサミを突き刺すというサイコな連続殺人事件が起きる。犯人は世間でハサミ男と呼ばれ、恐れられている。そんなハサミ男が3人目のターゲットを殺そうとしたまさにその時、当の少女はすでに殺されていた。しかも自分が殺そうと思ったまさにその方法で……というストーリー。ミステリという大枠の中で主人公のウィットに富んだ軽口を楽しむというスタイルは伊坂幸太郎と似ているが、こっちのほうが断然に面白い。伊坂幸太郎には決定的に欠けている毒があります。まあ毒があればいいってもんじゃないですが、ブラックユーモアは好きなのでこれはポイント高いですよ。それと伏線回収の手際も見事で、ラスト100ページは字面を追うのも煩わしいほど熱中できました。どうなってんだよ一体! はやく教えてくれよ! という欲望が強すぎて、読むスピードがそれに追いつかないのです。こんなにエンタメとして優れたミステリは久しぶりでした。

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