君に友だちはいらない / 瀧本哲史

自己啓発書と見せかけて市場経済の厳しさを延々と説く「僕は君たちに武器を配りたい」が大変面白かったので、本書も読んでみたが、あまり参考にならなかった。本書は、色々なコミュニティにコミットして弱いつながりを維持し、そうした人脈を使いながら起業や日々の仕事をやると捗ると主張する。ただ、そういった弱いつながりでもビジネスに役立つ場合というのは、本人が有能であり、周囲がこの人なら見返りがあると期待できる場合に限られるので、優秀な人以外は参考にできない。また、本書はプロジェクト単位でチームが組成され、プロジェクトが終わった後はすぐに解散するというような、流動性の高い労働市場にこれからはなっていくという予想をしている。それはある程度正しいのだけど、あまり現時点でそうはなっていないし、そうなることを見越して顔を広げるというのも、あまり現実的ではない。
もっとも、とりあえず色んな交流会で名刺交換したり、やたらとフェイスブックの友達を増やしたりする輩を批判しているあたりは、そうだよなと溜飲が下がる思いだ。うんうん、いるよな、こういう大学生と頷ける。とくに個人的に、リア充アピール会場となっているフェイスブックは嫌いで、登録はしたものの放置しているが、やっぱりこのまま放置するに限るな!
なお、著者が投資しているベンチャーのビジネスモデルが紹介されているが、創業者の意気込みとは裏腹に、あまり世界を変える感じがしないあたりが微妙だった。学生なら本書を読むよりレイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」を読んだ方が、よっぽど世界を変化させるビジネスの種を拾えると思う。