バッファロー'66

刑務所帰りのあんちゃんが家族にいいところ見せようと、結婚していると嘘をついて、その嘘を付きとおすためにその辺にいた女性を誘拐して、妻のふりをさせる、という話。……わかる。しょうもねえなあ、と読者が思ったことは手に取るようにわかる。実際、主人公はろくでもない男で、その過去にもろくなことがなかった。あまりにもろくなことがないので後半から可哀そうになるくらいで、もうちょっとなんかいい事あってもいいんじゃないか、という気になってくるから不思議だ。村上龍の短編のような、切実さと寂しさがあるところがよい。古谷実の「シガテラ」とか「わにとかげぎす」とかと近いものがあるかもしれない。あとヒロインかわいい。