動物化するポストモダン / 東浩紀

小説を読みすぎて、もはやいかなる物語が自分を真に感動させてくれるのかわからなくなってしまい、ここはひとつ批評の本でも読んでみようかな、と思った。僕にとって東浩紀グレッグ・イーガンを褒めたという点で評価に値する人であり、加えて「クォンタム・ファミリーズ」という傑作の作者という認知である。あんまり批評家としては興味が無かったのだが、本書はなかなか面白かった。著者の認識は、大きな物語という、世界の有象無象の深層を貫き、世界に統合をもたらすような概念が失われた、というものである。まあ、なんとなくそうだよね、という感じはする。何を頼りに生きていけばわからない、不確実性の高い時代を、大きな物語が失われたのだ、と表現されると、そういうもなのかな、という気もする。しかし、だからといって、アニメなどのサブカルで、ストーリーが希薄化し、萌えるシチュエーションの順列組み合わせが流行しているのも、大きな物語が失われたせいなんだ、と言われると、やや飛躍している気もする。依然として、ストーリーがある程度重要視されている例もあるし、ストーリーが蒸発したような作品にすら、その空白を観客が自由に想像で埋められるような仕掛けがあるからこそ人気を博しているのだという意見もあるだろう。
結局のところ、この本を読んでも、現代のサブカルの見取り図はわかるものの、大きな物語の喪失との関連にはやや疑問が残る、というところだろうか。読み物としては非常に面白い。