おれに関する噂 / 筒井康隆

筒井康隆の短編集では一番好き。表題作は、無名の会社員の私生活がいきなりマスメディアの報道の対象になるという、個人のブログが炎上する昨今を予言したかのような作品。なんの脈絡もなくテレビで、「今日は○○をデートに誘おうとしたが断られた」などと暴露され、しかもすぐに消費されて飽きられる。つまり、マスメディアの流す芸能記事なんてこれと同程度に無価値なはずなのに、なぜか人々の需要があるという、なかなか不思議な状態を風刺しているのですね。報道価値とは何かをめぐる深遠な作品なのですが、同時に最高に笑えるギャグ小説。