ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 / スティーグ・ラーソン

ミステリというよりもノンフィクションのような印象を受ける。つまり、飛躍的な発想による一点突破ではなく、地道な下調べによって少しずつ外堀を埋めていくような作業なのだ。この緻密さはジャーナリストである著者ならではであろう。ストーリーのほうは40年前に孤島で失踪した少女の行方を追う話であるが、大企業の犯罪告発とも絡めてあり、トリックを暴くというよりも不正を糺すところに重点が置かれている。とくに最後の暴露モードに入ったあたりは痛快でたまらない。
ただ登場人物の魅力がそんなになかったようにも思える。文体は簡潔で、流れるようにページをめくれるのだが、その分なにか心に引っかかるようなところもなかった。やはり読者としては超優秀なリサーチャーでエキセントリック少年ガールのサランデルに魅かれなくてはいけないのだろうが、こういう変人なら京極夏彦「今昔続百鬼 雲」とかが好きなのですよ。