医薬品メーカー 勝ち残りの競争戦略 / 伊藤邦雄

製薬業界の業界研究本としては抜群の出来です。この業界は高価格・高利益の新薬と、低価格・低利益のジェネリック医薬品(GE)の2つがありまして、どちらに特化することで経営戦略のおおまかな軸ができています。従来の分子化合物をつくっていくやり方で創薬するのは、もうネタ切れ感があるので、新薬開発だけに特化せずGEにも手を出して多角化を図るメーカーが出てきています。とはいえ、がんなどの不治の病も依然として残っているので、こういったアンメットメディカルニーズを満たすために新薬開発を続けるのも重要です。
さらに頭打ちの国内市場よりも伸びしろの多い海外市場にどう展開していくか、というのも課題です。製薬業界は合併がブームで、現地に子会社をつくるのではなく、現地のメーカーを買収するケースが多いようです。理由としては、「既存の販路を利用できる」・「開発途中の新薬をゲットできる」・「他分野への進出(たとえば新薬メーカーのGEメーカーの買収)」などです。第一三共が30%という高いプレミアムを払ってインドのGEメーカー・ランバクシーを買収したのもこれですね。あと新興国は治験のコストが安いので、規制の厳しい日本企業にとってはうれしいところです。