モザイク / 田口ランディ

うーん。これはどう評価したものかなあ。一応「コンセント」「アンテナ」に続く三部作の完結編なのだが、前二作に明らかに見劣りする出来で、あの傑作を生みの親である著者がいったい何を食ったらこんな駄作を書けるのか僕にはまったく理解できない。内容を一応説明すると、「渋谷の底が抜ける」という言葉を残して逃亡した電波な少年をめぐる電波な話ということで、まあいつものオカルトですよ。ただなんというか、締まりのないストーリーで、「コンセント」「アンテナ」のように物語のシンボルとなるようなものもないしなあ。まあ「モザイク」ってことでその辺はぼやけていて当然なのかもしれないが。
ああ、あとこの三部作で共通しているのは、「異常な人たちってのは別に異常でもなんでもなくてなにか別の世界を受像するための器官をもってるだけなんだよね。そしてそこに新しい価値があるよね」という素朴な信仰。これ自体のテーマ性とかはとくに論じるに値しない。そういった難しい話はグレッグ・イーガンなどを読んでおけばいい。ただ僕が田口ランディに期待していたのは、理屈が融解するような狂気あふれる臨場感で、そのめくるめく体験のできない本書は、気の抜けたコーラに等しい興味しか引くことはないのですな。