コンセント / 田口ランディ

毒にも薬にもならない本が多い中、これほど毒になる小説もめずらしい。突然電池が切れたように生きるのをやめた引きこもりの兄の謎を追うミステリとして、話は進む。だがそれは見せかけだけで実態は強烈なオカルトだ。この作品で描かれるオカルト内容は、気持ち悪いくらいに生命力のあるウィルスのようなもので、読めば必ずあなたの現実世界は浸食される。小林泰三「酔歩する男」(「玩具修理者」収録)のようなロジックのある狂気でなく、感性をベースにした狂気なので余計にたちが悪い。なぜってその狂気にはロジックの欠陥を突く反撃ができないからだ。
馬鹿らしいと頭ではわかっていても、生身の感覚のほうが犯されてしまえば理性のほうにむしろ違和感をもってしまう。賢明な諸子にはオススメできないが、非現実感の渦に沈みたいのなら、ぜひ本書でトリップしていただきたい。