たとえば、すでに米国のサルの脳に電極を刺して情報を観測し、それをネット経由でDLして日本のロボットに同じ動きをさせる、なんてことができます。「攻殻機動隊」風にいえば義体のリアルタイム・リモートコントロールですよ。人間の場合でも、頭皮の外側からヘッドギアをかぶって、アシモを動かすことができます。ゆくゆくは要介護者がロボットを思念で操作して自分を介護するなんてこともできるでしょう。めちゃくちゃ売れそうじゃないか、これ。この技術のいいところはロボットに人工知能を持たせる必要がない点です。人工知能にはフレーム問題など解決が難しい問題があるので、BMIの方が現実的なのです。
神経科学による精神医療へ
また精神疾患に対してもBMIは効果的らしいです。現にパーキンソン病の方の震えを止めるために、脳内の深部に電気刺激を送るという技術があります。そのためのインプラントはすでに商品化されていますが、同じようなインプラントはうつ病や統合失調症にも有効らしいです。
ケガをしているわけでもないのに、強い痛みを感じるという疼痛の患者さんも、電気刺激で痛みを軽くする治療があります。海外では、鬱病などの精神疾患の治療にも、脳深部刺激を用いる試みがなされていて、成功例も報告されています。どのようなしくみで効果があるのかは、詳しくわかっていません。*1
現状ではまだ原理を解明できてはいませんが、呪術的な「お話」で説明した気になっている現状の精神医療に比べると、かなり希望がもてます。
BMIに強い会社
じゃあどこがBMIに強いんだよ、と就活生としては知りたいところですが本書では数社が紹介されています。
とくに島津製作所のNIRS(近赤外光脳活動計測装置)は脳内に電極を刺さなくても、統計的な処理によって脳内の思念をリアルタイムに読みとることができるので需要が多そうです。やっぱり外科手術が必要なタイプだと、心理的な障壁のためどうしても普及が遅れますからね。島津製作所は、著者の所属する研究機関ATRとも共同研究をしており、この分野では非常に魅力的な会社です。
(ちなみに僕も説明会に行きましたが、文系の人が営業で入っても働きやすそうだと思いました。あとノーベル賞受賞者の田中さんと普通に会える、とかもファン垂涎。)