「涼宮ハルヒの憂鬱」好きなら読んどくべき5作

僕のような書痴がハルヒを読むと「ああ、このネタは前読んだあれにもあったな」といった既視感が際限なく襲ってきて、いざ書評するとなってもグルメ漫画に出てくる評論家みたいにうっとうしい成分分析をするだけになってしまう。しかしそんな元ネタ探しをしてもつまらない。というわけでここは「ハルヒも面白いけど、むしろ個人的にはこっちの方が……」という5冊を挙げて、書評に代えさせていただきます。


ヴァーナー・ヴィンジ「遠き神々の炎」

まずは宇宙人もの。この小説に出てくる宇宙人は複数の個体が集まって集団思考します。固体のそれぞれが異なる性格を持ち、その個体の集合がひとつの人格をつくるという設定なので、固体が欠けたり増えたりすると性格が変わります。つまり精神の品種改良が可能なのです。ワクワクしますね。どうせ宇宙人出すならこれくらいぶっ飛んでいないと。


小林泰三「目を擦る女」

未来人ものを探そうとしたんですが、よく考えたらタイムスリップもの・ループものをチョイスしたほうがいいなと思ってこの一冊。全く新しい形のタイムマシンが出てくる「未公開実験」が収録されています。他の短編ものきなみ水準以上で、何度も読み返したくなるほどくせになる短編集です。長門有希の100冊に含まれている「海を見る人」でもいいけど、あっちは物理定数の違う世界のシミュレーションだったりして想像力の限界を突破しているので、初心者向けのこちらを薦めます。

筒井康隆「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」

超能力もの。他人の心が読める能力者が世間を渡り歩く「家族八景」、能力者バトルの古典「七瀬ふたたび」、ハルヒと設定の近い「エディプスの恋人」の七瀬シリーズです。シリーズものということで、1作品とカウントしてます。これは人間観察がするどくて心が痛くなるくらいです。キョンの冷めたツッコミが好きなら楽しめるでしょう。

山本弘「アイの物語」

人工知能もの。長門って対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースのくせにあんまりその設定がいきてない気がするんですよね。その点この小説に出てくる人工知能は、ロボットと人間の境界にいるという立ち位置が明確で、なかなか興味深い。とくに介護ロボットが商品化前に介護施設で研修するエピソードは秀逸です。自分たちが地に足をつけているこの現実の延長線上にあるかもしれない、ちょっと進んだ未来が好きなら是非。

田中ロミオ「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」

中二病もの。ハルヒって宇宙人や超能力の存在を信じていて、それだけなら単なる痛い中二病ですよね。しかし実際にそんな奇天烈な連中が周りにいて、しかも当の本人はそれに気づいていない、というところに面白さがあると思います。さて、この小説のヒロインは自分が長門のような存在だと信じ切ってる不思議ちゃんなのですが、舞台設定がハルヒと違って現実的なのでなかなかハルヒみたいに天真爛漫に暴れまわることができません。正直リアルにハルヒみたいなのがクラスにいたらちょっと困るじゃないですか。その辺の不思議世界と現実世界のギャップがコミカルに描かれていて爆笑できます。