天狗の落し文 / 筒井康隆

筒井康隆のネタ帳をそのまま出版したような本です。まさに文章の切り売りでそんなもん誰が買うのであろうかと訝りながらも、そのキャッチコピーに仰天する。盗作ご自由。なんと。パクリ放題というわけだ。今回ほど気軽に本文を引用できるチャンスはない。これ見よがしに引用してやる。
と書きはじめてみたものの、さてはてどうしたものか。よーし父さんたくさん引用しちゃうぞー、とばかりに息巻いてはいるがはやくも前言を撤回したい気持ちでいっぱいです。だってこの「天狗の落とし文」はショートショートをさらに細分化したショートショートショートとでもいうべき細切れであり、中にはオチもヤマもないものさえある。

ぼくってコーヒーが好きじゃないですか。で、あなたと一緒に、よくコーヒー飲みに行くじゃないですか。で、あなたってやっぱりちょっと、馬鹿じゃないですか。だから、クリームを入れたあと、あの小さな容器をコーヒーに浸けて、ゆすぐじゃないですか。で、みんながあきれて見るじゃないですか。あれやっぱり、恥ずかしいじゃないですか。そういうとあなた怒るけど、変な癖って、誰にでもあるじゃないですか。それって注意されないとなかなか自分じゃ、わからないじゃないですか。注意されない限り、いつまでもいつまでも、えんえんとやってたりするじゃないですか。

って、なんだそれは。たしかに面白いがこれはもはやチラシの裏にでも書くべき駄文です。しかしそんな文章ですら面白く、出版される価値があるのが筒井康隆だ。