密室・殺人 / 小林泰三


小林泰三のミステリ。トリックがメインというよりも、どのようにして謎が発生したのか、そしてその謎を解き明かす探偵役は一体なんなのか、ということのほうがメインです。そういう意味では、京極夏彦のミステリと近いかもしれません。密室と殺人というミステリの二大構成要素とも言うべき単語が「・」をはさんでいる点に注目してください。密室殺人ではなく、密室と殺人なのです。
以下、かなり重大なネタバレ。


(0)探偵は実は普通の探偵である。
(1)探偵は実は幽霊である。
(2)探偵は実は旧支配者である。
(3)探偵は実は存在しない。
(4)探偵は実は助手の別人格である。
(5)探偵は実は助手のスタンドである。
密室・殺人/ネタバレ感想

このどれかひとつが真相らしいです。私は、(5)探偵は実は助手のスタンドである、だと思います。「ΑΩ」でもJOJOのパロディが出てきましたし、作者はJOJO好きであることは明白です。根拠を挙げると

  1. 「何か矢のようなものがわたしの体を貫いた」という記述。スタンドを発現させるあの矢かもしれない。
  2. 「スタンドはスタンド使いにしか見えない」ということで、探偵は助手以外の誰ともコミュニケーションをとっていないように見える。探偵の発言も全て助手が発言したものであり、それゆえに周りの人間は「茶番だ」と騒ぐ。
  3. 物理的なものを持っているシーンもあるが、それもスタンドの一部かもしれない。全裸のスタンドもいますが、服や携帯灰皿ぐらいスタンドの一部と解釈してもいいでしょう。
  4. 探偵は物理法則をスルーしている。たとえば誰も入れないはずの密室に登場したり。スタンドならば可能です。

そんなのアンフェアだ!ミステリじゃない! という方は、スタンドをすべて助手の妄想と考えてください。実際このスタンドは超常現象を起こしているのではなく、ただ推理しているだけですから、助手にしか見えない妄想と考えてもいいでしょう。