「甘え」の構造 / 土居健郎

日本人に特有の「甘え」という概念を精神学的に考察した本。何十年も前の古い本なんですが、今読んでもその内容に唸らされます。たとえばある外国人女性が「うちの子はあんまり甘えないんです」と言うとき、わざわざそこだけ日本語に直して喋ったというエピソードがあります。理由を訊くと、甘えに相当する言葉は日本語以外にないからだと言うのです。だからどうしたってこともないんですが、この当たり前の文化が世界的に見るとけっこう変わってるってことがわかって面白い。だいぶ前に読んだので結論は忘れてしまったんですが、たしかムラ中心の共同体社会と欧米から輸入した個人主義の衝突とかそんなのだったはず。まあ、この考え方自体はさして目新しいものでもないんですが、そのお決まりの結論がいかに導かれたのかという根拠の例示はポイント高めです。