つぐみとひばり / 瀬名秀明

「パラサイト・イヴ」で手に取り、「BRAIN VALLEY」で興奮し、「八月の図書館」で失望した人はけっこういると思うんですが、私もその口です。グレッグ・イーガン「祈りの海」の解説でも「ぼくになることを」よりも「祈りの海」の方を評価するようになったと書いており、なんだか遠く文学の彼岸へと旅立ってしまったかのようながっかり感がありました。
この短編でも似たような遠さを感じました。美しい文章、純度の濃い内容にこだわりすぎて肝心の中身があまり伝わってきません。以下ネタバレ。


私たちが小説を楽しむように、ロボットたちによって上演される人間の物語というのはノスタルジックでいいと思うんですが、ディティールが曖昧でどうにものめり込めないんです。どや、これが文学ってもんや、みたいな突き放した固さがあり、自分には合いません。円城塔の軽やかさが恋しい。自分では読み解く気になれないので、誰か納得のいく解説をしてくれないだろうか。